せいさんミニ通信(8)
2022.5.16 「天声人語」か・き・つ・ば・た 朝日新聞5月16日(月)
〈からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ〉。 鮮やかな水辺の花を見た平安歌人の在原業平は「か・き・つ・ば・た」の 5音を歌に織り込んだ。場所はいまの愛知県知立市の八橋町である▼妻を思い、 旅のわびしさを詠んだ一首は『伊勢物語』に収められた。その後、多くの歌人 俳人が八橋を訪れ、浮世絵、にも描かれた。愛知の県花にもなった▼「八橋の誇 りですが、ちゃんと咲かせなきゃと重圧も感じます」。八橋旧跡保存会の平沢 信幸会長(75)の言葉にはわけがある。無量寿寺境内のカキツバタ3万株を 5年前、「立ち枯れ病」が襲ったのだ。「がっかりしたお客さんに申し訳なくて。 県市と対応を練りました」▼水質が疑われれば新たに井戸を掘り、土質が怪し ければ近くの田から土を運ぶ。悪性のカビには手作業で1株ずつ殺菌剤をまいた。 奮闘が実り、今春は全盛期の8割に回復。筆者が訪れた先週、池一面が青紫に染 まっていた▼業平といえば、どうしても浮名を流す貴公子の像が浮かぶ。権勢の 道から外れても、和歌の才にた六歌仙に数えられた。取材では業平の艶聞(え んぶん)も話題に上ったが、平沢さんらの関心は、彼が詠んだ花の美を復活させ る方面に注がれていた▼吉野の桜に水戸の梅、最近ではウクライナのヒマワリ畑。 詩文や映画を通して土地と深く結ばれた花は多い。どれも同じ花を守り抜く苦労 あってこそ。年々歳々カキツバタを育んできた人々に感謝しつつ、にぎわう寺を 後にした。 |
![]() 五千円の裏のかきつばたは、江戸時代の巨匠、 尾形光琳の『燕子花図屏風』が使われている。 『燕子花図屏風』は、伊勢物語「八橋」の場面 を描いた作品なのだ。 伊勢物語では、三河国 の八橋(愛知県知立市八橋町近辺)は、水が蜘 蛛の手のように分かれて流れているために、八 つの橋を渡したことから「八橋」と名付けられ たとされ、その川の流れのほとりにかきつばた が美しく咲いていたと記されている。 |
2022.5.01 ロシアのウクライナ侵攻と朝日歌壇
永田 和宏 選
火柱のロシアの戦車に溜飲が下がるそこにも人がいるのに (観音寺市)篠原 俊則
【評】 「見る」側の安易な心理を鋭く突いた一首。一方的にロシア軍、その兵士らを悪と決めつけていては
その本質は見えてこない。
昨日までは遊具のありし公園が墳墓になりて十字架のたつ (観音寺市)武田 光弘
馬場あき子 選
戦争をしない生き物の春の野に雲雀と燕がこぼすさえずり (観音寺市)篠原 俊則
ウクライナ攻撃止まずわが郷は罪の如くに春の深まる (亀岡市)俣野 右内
【評】 日々ウクライナの情報が伝えられる。第一首の「戦争をしない生きもの」はそれに触発されてのものか。
下句に生の活力がみなぎる。
佐々木 幸綱 選
戦争で町が廃墟と化しゆくを進行形で見てる驚き (大洲市)村上明美
動物がおびえていると園長は戦火の中に留まるという (前橋市)荻原葉月
日本にも海越え派兵した歴史「侵攻」という言葉の重み (郡山市)柴崎茂
ウクライナの短歌を読みたく日曜のあした朝日を買いに走るも (東広島市)大成健次
ジャベリンやスティンガーなど昨年の春には知らざりし武器を覚える (昭島市)西山美津江
【評】 第一~五首、今週もウクライナの歌が多く寄せられた。進行形の戦争の報道をどう短歌にするか。
歌人たちの短歌もむろん問われているし、第四首にあるように、この点に関する新聞歌壇の選者の責任
も重いのだと思う。
高野 公彦 選
攻められて焦土広がるウクライナいま人びとはムンクの「叫び」 (横須賀市)矢田紀子
百四十三個のテディベア並ぶロシアの奪いし子どもらの数 (観音寺市)篠原俊則
美しき草色萌ゆるライ麦はいつか黄金の波になりゆけ (国分寺市)小山佐和子
再上映「ひまわり」見つつウクライナの別れあまたを暗がりに泣く (我孫子市)松村幸一
高遠(たかとお)の観桜のヘリ飛ぶ空は爆音止まぬ国に続きおり (伊那市)島村玲子
【評】 一首目、かの国の空にもムンクの「叫び」が湧いているかも。二首目、死んだ子どもの数だけ置かれた
テディベア。三首目、戦争が終わって農作物が順調に育ち、豊かに稔(みの)ることを願う歌。各句の頭に「う・く
・ら・い・な」を置いた折句。
2022.3.26 「僕に方程式を教えてください 少年院の数学教室」
著者 高橋 一雄(数学指導者), 瀬山 士郎 (群馬大学名誉教授), 村尾 博司 (元少年院長)(集英社新書) 990円
少年院の目的は「犯罪的傾向を矯正し、健全な心身を培わせ、社会生活に 適応するのに必要な知識及び能力を習得させること」と示されています。その ための教育(矯正教育)は日誌、作文、面接、内省指導などの生活指導の上に ①教科指導(基礎学力を身につける)、②体育指導(基礎体力の向上を通して 忍耐力を養う)③職業指導(退院後の仕事を見据えた基本技術の習得)、④特 別指導(院内の伝統行事や地域に開かれた教育行事を通して、共感性や協力 性を養う)がある。 中学生および六割以上を占める中学卒業・高校中退者に対する教科指導には、 ①平均入院期間は十一か月という時間的制約、②入院時期がまちまちというさ みだれ入院、③基礎学力不足という三重苦の上での教科指導、とくに数学は分 からナイ、つまらナイ、役に立たナイの「三ナイ」現象は少年たちを苦しめる。 そんな中、中学生には「分数の計算」「正負の数の計算」「文字式の運用」などを 組み込んだ「一次方程式の理解と習熟」、中学を卒業し、高等学校卒業程度認 定試験を受験希望する少年には「式の計算や平方根の計算を組み込んだ二次 方程式が解けること、二次関数の基本を理解」を公式や問題を解くだけでなく、 計算する意味を理解し考える数学の授業を展開する。 それは少年たちに「数学を通して学ぶことの大切さ、面白さを思い出させ、学び を通して人とつながることの大切さを感じさせ、想像力を通して、外の人とつなが っていく感性を養い、彼らの心を耕すことにつながる。」という。 その中で、ベストセラー参考書の著者でもある注目の数学指導者(高橋氏)、 数学教育の専門家(瀬山氏)、少年院を知り尽くした元法務教官(村尾氏)の三氏 が一緒になっての取り組みは少年たちを変えていく。 |
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南国南知多にもびっくり積雪15㎝
2022.2.12 琵琶湖畔で見つけた源氏香
2021.12.27 実は意外な資格・免許持ちの女優ランキング
ネットにはどうでもいいような「ランキング」が紹介されているが、その中に
12.27付のYahoo!に見出しの記事があった。https://rankingoo.net/
何気なくみたら 〈 第1位 松たか子(フォークリフト免許)〉
とあった。じつはこの資格取得については、2013.9.13付けの本欄ミニ通信
に「松たか子も悪戦苦闘した加速度の定義」としてフォークリフト免許試験の
話を紹介している。
改めて、役者の役作りはすごいと思った。(HIRO)
2021.12.18 円筒を組み合わせ相貫体のデコレーション
2021.1214 街中で見つけてたサインカーブ
2021.1212 無断欠勤OK,嫌いな仕事はしなくてよい会社
現在、大阪府茨木市のエビ加工・販売会社「パプアニューギニア海産」は社員3人、 パート従業員15人の中小企業である。 2011年までは宮城県石巻市に工場があったが、東日本大震災で工場が流され、 得意先の紹介で茨木市に移転し、再開したが、古くからの社員も辞めた。 石巻の工場では工場内にビデオカメラを設置して事務所から工場内を監視をして いたが、社長の長男で工場長のMさん(42)は「会社を続けるからには従業員に愛さ れる職場にしたい」と考え、パート従業員にはフリースケジュール制(届け出無しで いつでも休みを取れる)を導入。その結果、パート従業員が一人も来なかったことは 今までに一度だけあったが、その時は正社員で何とか乗り切ったという。さらに、昨 年からは嫌いな作業を行うことも禁止した。 こうしたことで、従業員の定着率が良くなり、人件費が年間400万円削減できたとい う。(TAKE) 「働きやすさを追求したら「無断欠勤OK」になる | 今週のHONZ | 東洋経済オンライン | 社会をよく する経済ニュース (toyokeizai.net)」 「無断欠勤OK、嫌いな仕事しなくて結構-大胆、パートの働き方改革「誰も出勤しない日も…」 大 阪・茨木の食品会社(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com) |
2021.12.7 黒田孝郎先生没後30年
黒田孝郎先生が亡くなられたのは1991年12月7日、今年でちょうど没後30年。 「数学教室92年3月号」に大阪大学数学科で同窓の宮本敏雄先生の追悼文が掲 載されている。先生は名古屋市の旧制惟信中学を経て阪大卒業後、旧制岡崎中 学に赴任し、幾何の授業を教えた。数年で東京物理学校に移られたが、幾何の 授業の内容を元にのちに名著といわれる「新數學對話」(誠文堂新光社)を著 した。 当時の教え子のひとりが高校の生物の教科書にも載っている「分子進化中立 説」を提唱した木村資生氏。文化勲章を受章され岡崎市の名誉市民でもある。 像が岡崎市のセキレイホールの前庭に建立されている。そのプレートに刻まれ た紹介文に「中学時代に数学の面白さも知った・・・」とあるがこれは、黒田 先生の授業を通じてということである。 1987年修善寺で行われた数教協全国大会の夜の交流会で黒田先生から木村君 の思い出として伺った。愛知県ご出身ということをその時に教えていただいたが、 もっと当時の愛知の様子、あるいは数学についてもお話を伺いたかったと改め て思う。 (HIRO) |
2021.11.20 2冊の本
① 「『嫌われた監督』落合博満は中日をどう変えたか」 鈴木忠平著 文芸春秋 落合は中日の監督を8年間務めた。成績は1位4回、2位3回、 3位1回 星野は中日の監督を11年間務めた。成績は1位2回、2位5回、 3位1回、4位1回、5位1回、6位1回 星野は鉄拳で選手をなぐった。 落合は監督に就任したとき、コーチに3つ のルールを通達した。 ① 絶対に選手を殴るな ② 選手が訊いてくるまではおしえるな ③ 選手と食事にはいくな 落合は星野や野村のように新聞記者に多くを語らなかった。そこで、 真意が伝わらず誤解も生じた。ファンサービスがないとも言われた。 日刊スポーツに入社して4年目の駆け出しの記者が落合の監督8年 間を12人の選手、コーチ、球団フロントマンを通して落合の実像に迫った。 ② 「『ことば』に殺される前に」 高橋源一郎 著 河出新書 アメリカ・マサチュ―セッツ州にある「サドベリー・バレー校」は4歳から 19歳までの子供を受け入れている。この学校はカリュクラムがない。 試験も通知表もない。学年もクラスもない。卒業証書もない。 この学校では決まった「授業」はない。子どもたちはずっと、好きなこと をして一日を過ごす。だから、9歳になっても字が読めない子もいる。それ なのにここを卒業した子たちの「学力」は普通の学校よりも高く、たいてい の子どもたちは希望の大学に進学する。 では、どうしているか。待つ、じっと待つ。 ある日、9歳から12歳までの12人の子どもたちがひとりの「おとな」の所 にやってきて、算数を教えてくれと頼みに来る。その結果は6年間かかる 算数を24時間で終了してしまう。 こんな夢のような学校が現実にあるんですね。 日本にも北海道から沖縄まで20校ほどある。 (take) |
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2021.11.10 遠山啓 最後の講演
数学教育協議会 第26回全国研究大会 (1978年8月)は愛知県の蒲郡温泉で開か れた。この大会は東海地区が初めて担当し、 参加者は2000名を超えた。 念講演は数教協委員長 遠山啓氏で演題は 「教育の原点にたちかえって」。 全国研究大会では遠山氏最後の講演だった。 講演の内容はこちら をご覧ください。 「数学教室1979年1月号」 記念講演をする遠山啓氏 → |
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2021.10.30 マジシャン「ナポレオンズ」パルト小石氏逝去
2021.9.18 「西三数学サークル通信 第1集」のこと
2021.9.15 大人になって「教養として数学を学びたい」人のための最高の一冊
2021.9.2 サッカーワールドカップアジア最終予選
昨日、サッカーワールドカップアジア最終予選の初戦が大阪のパナソニックスタジアム
吹田で行われた。相手はオマーン((世界ランク79位)、日本(世界ランク24位)で過去の
対戦成績は9勝3分けで一度も負けたことのない相手だった。
しかし、オマーンはこの試合に向けて1ヶ月の合宿を行い準備してきた。前半は押され
気味であったがなんとか耐え、0:0。しかし後半終了間際に左サイドをパス交換で崩され,
クロスから決勝点を奪われ負けた。日本はオマーンに気力、体力、戦術すべての面で負け
ていた。
7月に行われたオリンピックのサッカーではオーバーエイジ3人を含めて1ヶ月以上も試合
に向けて準備をし、予選リーグでは格上のメキシコ、フランスにも勝ち、3勝0敗で1位通過
できた。
ブラジルチームも南米予選では苦戦する。それは選手たちが世界各国に散らばってチーム
としての完成度が低いためだが、個々の能力が高いため苦しい試合も打開していく能力が
あるが、日本チームにはまだそこまでの個人の能力がない。そこで大切なのは戦術であり
指揮官の力だと思う。さて、今後チーム力をどこまで高めていくことができるか。
2021.8.25 今年度入試で使われた2021
2021.8.10 映画「キネマの神様」は、ぼっと見てられない
6日より全国封切となった「キネマの神様」。89歳の山田洋次監督の渾身の作品。
沢田研二、宮本信子、小林稔侍の70過ぎのロートル組と菅田将暉、永野芽郁、北川
景子の若手の対比も面白いが、何も言わない小道具が見もの。「ルービックキューブ」
はともかく、「ハノイの塔」が使われていた。その他、撮影所労組のアジビラもさりげ
なく映しだされる。(これは山田作品にはたびたび登場)映像の深みを観察できる映画
です。 (HIRO)
2021.8.10 斎藤敏光の教具(4)・・・木製タングラムでピタゴラスの定理2
2021.8.6 斎藤敏光の教具(3)・・・木製タングラムでピタゴラスの定理
2021.6.21 コロナワクチンと朝日歌壇
高野 公彦 選
幾許(いくばく)も無きわが未来消えゆくコロナ禍の世に居合はせしばかりに 平野 明子 (福島県)
面倒で老いボケの道突き進むワクチン予約パソコンもなし 石原 学 (山梨県)
世事に長(た)ける高齢者のみ生き残れと仄めかすようなワクチン接種 末光 奈緒子 (横浜市)
接種終えた安堵の笑顔テレビ越しにまだ受けられぬ人々が見る 上田 結香 (東京都)
〈評〉 電話しか通信手段のない高齢者の場合、ワクチン接種の予約で
置き去りにされている人が多い。平野さんはその孤独感を詠み
石原さんは憤懣をあらわにする。政府はこうした高齢者に対し、
救いの手を差し伸べないのだろうか。
2021.5.30 オリンピックと朝日歌壇
永田 和宏 選
「県境を超えるな」と言い国境を越える五輪を止めない都知事 篠原 俊則 (観音寺市)
オリンピックを招致の人が東京へ来ないでと言ふ緊急事態 松井 恵 (浜松市)
見に行くな見ても喋るな拍手せよ腫物のごと聖火来県 村上 明美 (大洲市)
反対の声はミュートにアナウンスだけが伝える聖火リレーを 塚本 恭子 (久留米市)
〈評〉 オリンピックをどうするかの決断は、いよいよ先送りできない時期
になっているのに、その対応の不徹底はと、苛立つ最初の四首。
2021.1.25 西三サークル通信第9集発刊
2021.1.16 安野光雅氏逝去